2/08/2006

皇位継承者

[秋篠宮妃紀子さま]典範改正、先送り論加速 揺れる政界

秋篠宮妃紀子さま(39)懐妊の知らせは7日、女性・女系天皇を認める皇室典範改正の是非論に揺れる政界を一気に駆けめぐった。男児を出産すれば皇位継承順位は第3位になるが、政府の有識者会議の報告に従い典範が改正されれば、皇太子さまの次の皇位継承順位は敬宮愛子さまになる。報道で初めて懐妊を耳にしたという小泉純一郎首相はこれまでの方針通り改正案の今国会提出を目指す考えを改めて示したが、慎重派を中心に先送り論が加速することは確実だ。

◇政府は「予定通り」

7日午後2時すぎ、NHKテレビで「紀子さま懐妊」のニューステロップが流れたころ、衆院予算委員会室では、民主党の岡田克也前代表がまさに皇室典範問題を取り上げていた。

約10分後、首相の背後から皇室担当の首相秘書官が報道を知らせるメモを示した。瞬間、首相は表情を変え、メモを指さしながら振り返って確認を求めるなど驚きを隠さなかった。官邸に戻ってからも宮内庁への確認に手間取り、側近に「(懐妊は)本当なのか」と語るなど、半信半疑だったという。

ただ、委員会で首相は「今国会中に成立するよう努力したい。政争の具にしないよう冷静に穏やかに慎重に審議を重ね、後々安定的に皇位を継承し、天皇制を長く維持するには、決して早すぎない」と述べ、今国会での改正案成立を目指す考えを改めて示した。政府は懐妊と改正問題を切り離し、3月10日めどの国会提出に向け、改正案作成作業を進める方針だ。

改正案は、天皇陛下の孫の代に皇位継承者が不在で、皇室の安定的維持には男性皇族が少なすぎるとの前提に基づく。秋篠宮家に男子が誕生した場合「法改正の前提が崩れる」との指摘が強まる可能性はある。ただ、有識者会議が昨年11月にまとめた報告書には「今後、皇室に男子がご誕生になることも含め、中長期的な制度のあり方として最善のものであると判断した」と書かれている。内閣官房幹部は「男子誕生でも将来的に男系だけでは行き詰まる。改正案はこうした事態も想定していた。粛々と準備するだけだ」と語った。

新たな展開を受け、自民、民主両党の典範改正慎重・反対派は勢いづいている。超党派の保守系議員でつくる「日本会議国会議員懇談会」の平沼赳夫会長は7日、記者団に「こういう事実が出たら、なおさら拙速は厳に慎むべきだ」と強調。「皇室での男子出産の可能性を証明するもので、皇室典範改正は拙速を慎むべきだ」(島村宜伸元農相)など、先送り論が相次いだ。

紀子さまの出産は今秋に予定されるが、今国会は夏に閉幕する。「これまでは政局絡みだと言われたが、今後は常識論として先送りが主張できる」と慎重派議員は解説する。自民党執行部は改正をめぐり、内閣部会での勉強会を月内に終え、来月初めには改正案を部会了承するスケジュールを描く。党内手続きには総務会などで意見集約が必要で、細田博之国対委員長は「(現時点では)全くの白紙。政府もいろいろ考えるだろう」と述べ、政府の出方を見守る意向を示した。

一方、民主党の前原誠司代表は同日の記者会見で、典範改正に与える影響について「お子様を授かられて、違う意味での注目を浴びるのは気の毒。政府はそういうものも勘案して対応すべきだ」と述べ、政府は今国会提出を見送るべきだ、との考えを強くにじませた。

このため、官邸内でも改正の是非をめぐる自民党内の対立が先鋭化することを危ぶむ声が出ている。改正に慎重とされる安倍晋三官房長官は7日の記者会見で「宮内庁の正式な(ご懐妊の)発表を受けて、法案との関係は検討したい」と述べ、場合によっては提出見送りもあり得ると受け取られかねない発言をした。

◇現行典範 男子なら継承順位変更

秋篠宮家の第3子が皇位継承問題で大きく注目されるのは、男子が誕生すれば、現行の皇室典範では、継承順位が入れ替わることになるからだ。現在は、(1)皇太子さま(2)秋篠宮さま(3)常陸宮さま(4)三笠宮さま(5)寛仁親王殿下(6)桂宮さま――の順で継承資格を持つ。男子が誕生すれば、秋篠宮さまに次ぐ3位となり、天皇、皇后両陛下の孫の世代に初めて継承者が出来ることになる。

一方、有識者会議の報告書通り、女性・女系天皇や女性宮家を容認し、順位も「長子優先」とする皇室典範の改正があった場合、男子でも女子でも順位に変化はない。(1)皇太子さま(2)敬宮(としのみや)愛子さま(3)秋篠宮さま(4)眞子さま(5)佳子さま――に次ぐ6番目だ。

継承資格者は、秋篠宮家に男子が誕生すれば現行では7人、改正されれば男女にかかわらず15人。いずれにしても、皇位の安定的な継承のためには、改正が必要との指摘もある。実際、現行典範のままでは眞子さまや愛子さまは結婚すれば皇室を離れる。両陛下の孫に当たる若い世代の皇族が、秋篠宮家に誕生した男子ただ一人ということになりかねない。

有識者会議は最終的に、継承順位について「長子優先」と結論付けたが、「兄弟姉妹間で男子優先」とする案も検討された。秋篠宮家に男子の第3子が誕生すれば、仮に兄弟姉妹間男子優先を採用した場合、改正典範でも継承順位は4位となる。懐妊によりこうしたことが現実味を帯びてくるため、有識者会議が検討しながら退けた案が再浮上する可能性がある。

◇小泉首相との一問一答

小泉純一郎首相の記者団との一問一答は次の通り。(7日夕、首相官邸で)

――紀子さまの懐妊の報告は受けたか。

◆まだまったくありません。

――今国会に提出予定の皇室典範改正案への影響はどう考えるか。

◆正式の報告がないのに、私の立場で言うべきではない。

――たとえ男子が生まれても女系天皇容認の方針に変わりはないのか。

◆国会でも答弁しているように、(皇室典範に関する有識者会議の)報告書に沿って今国会に法案を提出する準備をしているわけですから。

――男子が生まれることの可能性も考慮したうえでの改正案か。

◆そうですね、はい。

――改正案を今国会に提出し、成立を目指すのか。

◆そりゃあ、そうですね。

◇制度検討は必要

▽女性・女系天皇容認派の所功・京都産業大教授の話 男子が誕生すれば結構だが、将来にわたり確実に男子に恵まれる保証はないから現行の皇室典範を改正しなければならない。ご懐妊中は、紀子さまの体に影響を与えないよう騒然となるような事態は避けねばならないが、制度の検討は進めるべきだ。議論を凍結しないであらゆる角度から検討を続け、1年ぐらいの間に改正法案を成立させるべきだろう。

◇立法化は白紙に

▽男系男子維持派の大原康男・国学院大教授の話 こうしたことをあらかじめ考えつつ、皇位継承の問題に慎重に対処するよう主張してきた。これを契機に、現在の皇室典範改正の進め方は大きく修正すべきだ。有識者会議の報告に沿った立法化作業はいったん白紙に戻し、改めて皇室制度の全般的な見直しを検討するよう願っている。


その後、小泉総理は、立法化に慎重な姿勢を見せ始めた。
結論を先延ばしにする日本独特の方法に移行しようとしています。

充分審議してきめないのなら、いつも男の子を求める意見が、支配する。男女の割合は、確率的に約半分なのだから、女帝を含めて、決めなければまた同じ騒動になると思う。